この記事では、法月綸太郎のミステリ小説をランキング形式で紹介いたします。ランキングの指標には、ミステリ業界で毎年恒例となっている4大ミステリランキングを用います。具体的には以下の4つです。
・「週刊文春ミステリーベスト10」(1977年~)
・「このミステリーがすごい!」(1988年~)
・「本格ミステリ・ベスト10」(1997年~)
・「ミステリが読みたい!」(2008年~)
これら4つのランキングにおいて、当該作品が1位の場合には10点、2位の場合には9点、3位の場合には8点……10位の場合には1点を付与します。作品ごとに点数を集計し、合計点数の高いものを上位として順位をつけていきます。
法月綸太郎の全作品のうち、今回得点の対象となった作品は全部で10作です。1位から5位まではあらすじを含めて紹介し、6位以下は一覧表で確認できるようにまとめました。
上位の作品ほど複数のランキングで高く評価されたことになるため、きっと客観的な指標として役に立つと思います。これから法月綸太郎の小説を読みたいと考えている方にとって参考になれば幸いです。
第1位:『ノックス・マシン』 35点
2058年4月、上海大学で20世紀の探偵小説を研究していたユアン・チンルウは、国家科学技術局から呼び出される。博士論文のテーマ「ノックスの十戒」第5項が、史上初の双方向タイムトラベル成功に重要な役割を担う可能性があるというのだ。その理由を探るべく、実験に参加させられた彼が見たものとはー。表題作「ノックス・マシン」、名探偵の相棒たちが暗躍する「引き立て役倶楽部の陰謀」などを含む中篇集。
(「BOOK」データベースより引用)
第1位は、2013年に刊行された中短編集『ノックス・マシン』です。得点は35点。「このミステリーがすごい!」と「ミステリが読みたい!」で見事2冠を達成するなどし、高得点獲得となりました。4つの中短編が収録された作品集で、それらは著者の言葉を借りれば「本格ミステリを主題にしたSF」となっています。その狙いどおりSF界でも本作は非常に高く評価されました。かなりマニアックな作品ですが、「ノックスの十戒」や、クリスティ、クイーン、ヴァン・ダインなどの海外作家たちの名前につい反応してしまうミステリファンにはたまらない一冊です。
第2位:『生首に聞いてみろ』 29点
彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた愛娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。江知佳の身を案じた叔父の川島敦志は、法月綸太郎に調査を依頼するが。
(KADOKAWAHPより引用)
第2位は、2004年刊行の長編『生首に聞いてみろ』です。得点は29点。「このミステリーがすごい」「本格ミステリ・ベスト10」で1位、「週刊文春ミステリー」で2位となり、当時は「ミステリが読みたい!」が創設前だったため、あと1歩で3冠完全制覇というところでした。作者と同名の名探偵が活躍する「法月綸太郎」シリーズのうちの一作。石膏像の首が持ち去られるという一見地味な謎をめぐる物語ですが、綿密に張り巡らされた伏線の回収が見事な本格ミステリです。第5回本格ミステリ大賞受賞作でもあり、著者の代表作のひとつといっていいでしょう。
第3位:『キングを探せ』 28点
繁華街のカラオケボックスに集う四人の男。めいめいに殺意を抱えた彼らの、今日は結団式だった。目的は一つ、動機から手繰られないようターゲットを取り換えること。トランプのカードが、誰が誰を殺るか定めていく。四重交換殺人を企む犯人たちと、法月警視&綸太郎コンビの、熾烈な頭脳戦をご堪能あれ!
(講談社HPより引用)
第3位は、2011年に刊行された長編『キングを探せ』です。得点は28点。4つのランキングすべてでトップ10入りし、とくに「本格ミステリ・ベスト10」で1位、「ミステリが読みたい」で2位と高評価を獲得しました。こちらも「法月綸太郎」シリーズのひとつで、四重の交換殺人を扱った倒叙ミステリ。凝った計画殺人が意外な方向へ転がっていくプロットと、犯人たちと探偵たちのパートを交錯させながら読者を翻弄する構成が楽しい一作です。スマートでキレがよく、分量もコンパクトなので、法月作品の入門におすすめです。
第4位:『法月綸太郎の新冒険』 10点
名探偵・法月綸太郎が帰ってきた! 著者会心の傑作鉄道ミステリー「背信の交点(シザーズ・クロッシング)」、オカルトじたての怪事件「世界の神秘を解く男」、法月綸太郎本人が登場しない異色作「身投げ女のブルース」など、テーマと構成にこだわりぬいた中編を収録。本格推理の醍醐味が味わえる〈知恵と工夫のエンタテインメント〉!!
(講談社HPより引用)
第4位は、1999年刊行の短編集『法月綸太郎の新冒険』です。得点は10点。上位3作から得点はずいぶん離れることになりましたが、「本格ミステリ・ベスト10」において見事1位を獲得しています。タイトルからもわかるとおり「法月綸太郎」シリーズの1作で、短編集としては『法月綸太郎の冒険』に続く2作目です。冒頭のイントロダクションを除き、全部で5編収録。やや込み入った作品が多いですが、なかでもあえて法月綸太郎を登場させていない異色作「身投げ女のブルース」はどんでん返しのインパクトが大きく、おすすめの一作です。
第5位:『法月綸太郎の功績』 9点
殺人事件の被害者が残した「=Y」の文字は、はたして何を意味するのか!? エラリイ・クイーンへのオマージュである、ダイイング・メッセージものの傑作「イコールYの悲劇」、第55回日本推理作家協会賞受賞作「都市伝説パズル」など、ロジカルな推理が堪能できる本格ミステリ5編を収録した、ファン待望の作品集。
(講談社HPより引用)
第5位は、2002年に刊行された短編集『法月綸太郎の功績』です。得点は9点。第4位に続き、こちらも「本格ミステリ・ベスト10」のみでトップ10入りを果たした作品となりますが、2位という高順位を獲得しています。やはり「法月綸太郎」シリーズのうちのひとつで、短編集としてはシリーズ3作目となります。全5編収録で、「イコールYの悲劇」「中国蝸牛の謎」はそれぞれエラリー・クイーン『Yの悲劇』『チャイナ橙の謎』、「ABCD包囲網」はアガサ・クリスティ『ABC殺人事件』を意識しているなど、先達へのオマージュたっぷりの一冊。また、第55回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した「都市伝説パズル」は、著者の短編のなかでも指折りの作品となっています。
全10作のランキング
1点以上を獲得した作品、全10作のランキングは以下のとおりです。各ミステリランキングの名称はスペースの都合上、略して書いています。各ランキングの順位で空欄になっているマスは10位圏外、「ー」はランキング開始前を表しています。なお、スマホの方は表を横にスクロールできます。
順位 | 点数 | タイトル | 文春 | このミス | 本格 | ミス読み |
---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 35点 | 『ノックス・マシン』 | 3位 | 1位 | 4位 | 1位 |
2位 | 29点 | 『生首に聞いてみろ』 | 2位 | 1位 | 1位 | ー |
3位 | 28点 | 『キングを探せ』 | 5位 | 8位 | 1位 | 2位 |
4位 | 10点 | 『法月綸太郎の新冒険』 | 1位 | ー | ||
5位 | 9点 | 『法月綸太郎の功績』 | 2位 | ー | ||
6位 | 6点 | 『犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題』 | 5位 | |||
7位 | 3点 | 『怪盗グリフィン、絶体絶命』 | 8位 | |||
7位 | 3点 | 『密閉教室』 | 8位 | ー | ー | |
7位 | 3点 | 『挑戦者たち』 | 8位 | |||
10位 | 1点 | 『二の悲劇』 | 10位 | ー | ー |
まとめ
以上、4大ミステリランキングの結果から独自集計した、法月綸太郎のミステリ小説ランキングでした。寡作で知られる著者ですが、新作が出るたびに本格ミステリファンを唸らせ、とくに「本格ミステリ・ベスト10」では3度も1位を獲得。大胆かつ緻密な推理を楽しみたい読者には必読の作家です。気になった作品があった方はぜひ手にとってみてください。