三億円事件を題材にした小説4選!

ミステリ

三億円事件とは、1968年12月10日、東京都府中市で現金輸送車に積まれた約3億円の現金が白バイ警察官に扮した男に奪われた事件です。警察の大捜査にもかかわらず犯人検挙にはいたらず、1975年に公訴時効が成立。しばしば昭和最大の未解決事件と呼ばれています。

3億円は、現代の貨幣価値に換算すると数十億円以上ともいわれます。それだけの金額が奪われた大事件でありながら未解決に終わったということで、これまでにフィクション・ノンフィクションを問わず多くの作品で取りあげられています。

この記事では、そんな三億円事件を題材にした小説を紹介いたします。

『閃光』永瀬隼介

玉川上水で男性の扼殺体が発見された。捜査陣に名乗りを上げた老刑事・滝口と相棒に選ばれた巡査部長の片桐。滝口はこの殺人事件に三十年以上前に起きた“三億円事件”との接点を見いだす。その頃、殺された男と三億円事件当時仲間だった連中がにわかに再会を果たしていた。昭和最大のミステリーに、緊密な文体と重層的なプロットで迫る! 『19歳 一家四人惨殺犯の告白』で読者を震撼させた著者がものした、犯罪小説の白眉。
(KADOKAWAHPより引用)

閃光』は、永瀬隼介による長編小説です。永瀬隼介は元々ノンフィクション作家として活動しており、その著書『疑惑の真相 「昭和」8大事件を追う』のなかでも三億円事件を取りあげていますが、本作はフィクションとして同事件を描いたものとなります。

作品の舞台は2002年。東京の玉川上水で扼殺死体として発見された男性が、34年前に起きた三億円事件と関わりのある人物であったことから始まるミステリです。34年前当時、新人刑事として三億円事件に関わった滝口をはじめとする捜査陣と、三億円事件の実行犯たちの姿を交錯させながら、現在と過去2つの事件の真相と、関係者たちの人生の変遷を描く一作となっています。

実際の三億円事件の真相としていくつか囁かれている説のうち、「立川グループ」と呼ばれる非行少年たちが関わったとする複数人犯説を援用。刑事たちをはじめ多くの登場人物が出てくるため、誰に感情移入して読むか少し難しい部分もありますが、さまざまなドラマが重層的に交錯する力作です。

『ルパンの消息』横山秀夫

十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人──。警視庁に入った一本のタレ込みで事件が息を吹き返す。 当時、期末テスト奪取を計画した高校生三人が校舎内に忍び込んでいた。捜査陣が二つの事件の結び付きを辿っていくと、戦後最大の謎である三億円事件までもが絡んでくるのだった。 時効まで二十四時間、事件は解明できるのか!? 著者”幻の傑作”待望の文庫化。
(光文社HPより引用)

ルパンの消息』は、横山秀夫による長編小説です。1991年にサントリーミステリー大賞の佳作を受賞しながら刊行には至らず、長らく「幻の処女作」とされていたものの、15年後の2006年に改稿を経てようやく日の目を見た作品です。

物語の平成初期からスタート。15年前の自殺とされた女性教師の墜落死が、じつは殺人だったという疑いが持ち上がり、時効寸前で事件の関係者が取り調べを受けることになります。そこから当時の回想が始まるのですが、その墜落死の起きた日時がちょうど三億円事件の時効が成立するころだったという奇妙な符合があり、意外な形で2つの事件が絡みあうことになります。

いくつかの有力な説とはほとんど関係ない形で三億円事件を扱っているのが本作のユニークなところ。稀代の作家が「幻の処女作」でどのようなチャレンジをしてみせたのか、ぜひその目で確かめていただければと思います。

『共犯マジック』北森鴻

人の不幸のみを予言する謎の占い書《フォーチュンブック》。偶然入手した七人の男女は、運命の黒い糸に絡めとられたかのように、それぞれの犯罪に手を染める。錯綜する物語は、やがて驚愕の最終話へ。連作ミステリーの到達点を示す傑作長篇。
(Amazonより引用)

共犯マジック』は、北森鴻による連作短編集です。プロローグを除いて全7話(6話+最終話)で構成された連作ミステリですが、最終話ですべてが収束されることに主眼を置いたような作りとなっており、むしろ長編のように読める一作です。

連作を貫く軸は主にふたつあり、ひとつは人の不幸のみを予言するという謎の占い書「フォーチュンブック」。もうひとつは、帝銀事件、三億円事件、グリコ・森永事件、さらには学生運動、ホテルニュージャパン火災などを含む昭和の大きな事件や出来事です。なかでも三億円事件は重要なモチーフなのですが、どのような形で作品に関わっているかネタバレなしで説明するのは非常に難しいため、実際に読んでくださいとしか言いようがありません。

ツッコミどころもありますが、著者の壮大な構想が光る意欲的なミステリです。

『小説3億円事件』松本清張(『水の肌』所収)

小説3億円事件」は、松本清張による短編小説です。短編集『水の肌』に収録されています。『日本の黒い霧』や『小説帝銀事件』など昭和の大事件についての著作を持つ松本清張ですが、ご多分に漏れず三億円事件についても執筆しており、事件から7年後、刑事事件としての時効が成立するころに発表されたものです。

基本的には「立川グループ」が関与した複数犯人説を採用。アメリカの保険会社調査員の報告書という体裁をとり、タイトルに「小説」とつけてありますが、似たようなつくりの『小説帝銀事件』がそうであったように、本作も松本清張自身が信じている説を披露したものかもしれません。

昭和の大事件の数々を探求した「大清張」が三億円事件についてはどう描いたのか、気になる方はぜひチェックしてみてください。

まとめ

以上、三億円事件を題材にした小説4作の紹介でした。日本犯罪史上に残る未解決事件だけに真相としてさまざまな説が囁かれる同事件ですが、フィクションにおいてはそれらの説を取りこむのか、あるいはまったくオリジナルの説を創作するのかという点だけでも興味深いものがあります。気になる作品のあった方は、ぜひ手にとってみていただければと思います。