1961年、岩波書店が『100冊の本 ─岩波文庫より─』という非売品の小冊子を刊行しました。これは15名の識者の投票・討議により、岩波文庫の収められている作品から100点を選出するという企画でした。現在「新潮文庫の100冊」など、出版社が100冊の本を選出するフェアがいくつもありますが、本企画はその原点といっていいでしょう。
選者は、臼井吉見、大内兵衛、大塚久雄、貝塚茂樹、茅誠司、久野収、桑原武夫、武谷三男、鶴見俊輔、中野重治、中野好夫、松方三郎、丸山真男、山下肇、渡辺一夫の15名です。
この記事では、本企画で選出された100作を一覧表にまとめました。表は現在の文庫の帯の色ごとに分け、著者の五十音順に並べてあります。なお、日本人作家と海外作家が混在する表では、日本人作家を先に表記しています。
作品名のリンクからAmazonの商品ページに飛ぶことができます。リンク先は基本的には岩波文庫になっていますが、絶版かつ他の版元で入手しやすい作品の場合はそのかぎりではありません。
黄帯:日本文学(古典)(7作)
緑帯:日本文学(近代・現代)(21作)
タイトル | 著者 | 種類 |
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『羅生門・鼻・芋粥・楡盗』 | 芥川龍之介 | 小説 |
『或る女』 | 有島武郎 | 小説 |
『啄木歌集』 | 石川啄木 | 歌集 |
『北原白秋詩集』1 | 北原白秋 | 詩集 |
『蟹工船、一九二八・三・一五』 | 小林多喜二 | 小説 |
『斎藤茂吉歌集』 | 斎藤茂吉 | 歌集 |
『暗夜行路』 | 志賀直哉 | 小説 |
『藤村詩抄』 | 島崎藤村 | 詩集 |
『破戒』 | 島崎藤村 | 小説 |
『高村光太郎詩集』 | 高村光太郎 | 詩集 |
『富嶽百景・走れメロス』 | 太宰治 | 小説 |
『寺田寅彦随筆集』 | 寺田寅彦 | 随筆 |
『土』 | 長塚節 | 小説 |
『こころ』 | 夏目漱石 | 小説 |
『吾輩は猫である』 | 夏目漱石 | 小説 |
『真空地帯』 | 野間宏 | 小説 |
『萩原朔太郎詩集』 | 萩原朔太郎 | 詩集 |
『にごりえ・たけくらべ』 | 樋口一葉 | 小説 |
『銀河鉄道の夜』 | 宮沢賢治 | 小説 |
『友情』 | 武者小路実篤 | 小説 |
『阿部一族』 | 森鴎外 | 小説 |
赤帯:外国文学(39作)
タイトル | 著者 | 種類 |
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『水滸伝』 | ー | 小説 |
『唐詩選』 | ー | 詩集 |
『アンデルセン自伝』 | H・C・アンデルセン | 自伝 |
『人形の家』 | ヘンリック・イプセン | 戯曲 |
『アルプス登攀記』 | エドワード・ウィンパー | ノンフィクション |
『ファウスト』 | J・W・V・ゲーテ | 戯曲 |
『若きウェルテルの悩み』 | J・W・V・ゲーテ | 小説 |
『外套・鼻』 | ニコライ・ゴーゴリ | 小説 |
『どん底』 | マクシム・ゴーリキー | 戯曲 |
『ヴェニスの商人』 | ウィリアム・シェイクスピア | 戯曲 |
『ハムレット』 | ウィリアム・シェイクスピア | 戯曲 |
『クオ・ワディス』 | ヘンリク・シェンキェヴィチ | 小説 |
『田園交響楽』 | アンドレ・ジッド | 小説 |
『静かなドン』 | ミハイル・ショーロホフ | 小説 |
『赤と黒』 | スタンダール | 小説 |
『桜の園』 | アントン・チェーホフ | 戯曲 |
『父と子』 | イワン・ツルゲーネフ | 小説 |
『モンテ・クリスト伯』 | アレクサンドル・デュマ | 小説 |
『ハックリベリー・フィンの冒険』 | マーク・トウェイン | 小説 |
『カラマーゾフの兄弟』 | フョードル・ドストエフスキー | 小説 |
『罪と罰』 | フョードル・ドストエフスキー | 小説 |
『戦争と平和』 | レフ・トルストイ | 小説 |
『谷間のゆり』 | オノレ・ド・バルザック | 小説 |
『フランクリン自伝』 | ベンジャミン・フランクリン | 自伝 |
『ボヴァリー夫人』 | ギュスターヴ・フローベール | 小説 |
『嵐が丘』 | エミリー・ブロンテ | 小説 |
『デミアン』 | ヘルマン・ヘッセ | 小説 |
『武器よさらば』 | アーネスト・ヘミングウェイ | 小説 |
『イリアス』 | ホメロス | 叙事詩 |
『トニオ・クレエゲル』 | トーマス・マン | 小説 |
『ユートピア』 | トマス・モア | 小説 |
『タルチュフ』 | モエリール | 戯曲 |
『女の一生』 | ギ・ド・モーパッサン | 小説 |
『レ・ミゼラブル』 | ヴィクトル・ユーゴー | 小説 |
『阿Q正伝・狂人日記』 | 魯迅 | 小説 |
『ジャン・クリストフ』 | ロマン・ロラン | 小説 |
『ベートーヴェンの生涯』 | ロマン・ロラン | 伝記 |
『息子たちと恋人たち』 | D・H・ロレンス | 小説 |
『荒野の呼び声』 | ジャック・ロンドン | 小説 |
青帯:思想・哲学・宗教・歴史・地理・音楽・美術・教育・自然科学(23作)
タイトル | 著者 | 種類 |
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『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』 | 内村鑑三 | 自伝 |
『茶の本』 | 岡倉覚三(岡倉天心) | 評論 |
『貧乏物語』 | 河上肇 | 評論 |
『歎異抄』 | 親鸞 | 思想書 |
『蘭学事始』 | 杉田玄白 | 手記 |
『善の研究』 | 西田幾多郎 | 哲学書 |
『福翁自伝』 | 福沢諭吉 | 自伝 |
『文明論之概略』 | 福沢諭吉 | 思想書 |
『旧約聖書 創世記』 | ー | 聖書 |
『永遠平和のために』 | イマヌエル・カント | 哲学書 |
『論語』 | 孔子 | 思想書 |
『水と原生林のはざまで』 | アルベルト・シュヴァイツァー | ノンフィクション |
『古代への情熱』 | ハインリヒ・シュリーマン | 自伝 |
『ビーグル号航海記』 | チャールズ・ダーウィン | ノンフィクション |
『方法序説』 | ルネ・デカルト | 哲学書 |
『この人を見よ』 | フリードリヒ・ニーチェ | 自伝 |
『ファーブル昆虫記』 | ジャン・アンリ・ファーブル | 学術書 |
『ロウソクの科学』 | マイケル・ファラデー | 学術書 |
『饗宴』 | プラトン | 哲学書 |
『ソクラテスの弁明・クリトン』 | プラトン | 哲学書 |
『ベルツの日記』 | エルウィン・ベルツ | 日記文学 |
『実践論・矛盾論』 | 毛沢東 | 評論 |
『社会契約論』 | ジャン=ジャック・ルソー | 評論 |
白帯:法律・政治・経済・社会(10作)
タイトル | 著者 | 種類 |
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『人権宣言集』 | ー | ー |
『職業としての学問』 | マックス・ウェーバー | 学術書 |
『空想より科学へ』 | フリードリヒ・エンゲルス | 評論 |
『賃労働と資本』 | カール・マルクス | 評論 |
『共産党宣言』 | カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス | ー |
『ミル自伝』 | J・S・ミル | 自伝 |
『世界をゆるがした十日間』 | ジョン・リード | ノンフィクション |
『リンカーン演説集』 | エイブラハム・リンカーン | 演説集 |
『告白』2 | ジャン=ジャック・ルソー | 自伝 |
『帝国主義』 | ウラジミール・レーニン | 評論 |
まとめ
以上、100冊の本 ─岩波文庫より─』に選出された作品の一覧でした。現在では絶版で手に入りにくい本も一部ありますが、多くは現在でも読み継がれている名著ばかりです。岩波文庫にチャレンジする際の参考にされるのもよいかと思います。