将棋を題材にした時代小説おすすめ3選!

ボードゲーム小説

2010年代後半以降、将棋ブームの影響で将棋を題材にした小説が増えてきました。多くは現代を舞台にした作品ですが、数は少ないながらも江戸時代を舞台にした将棋時代小説も書かれています。

現在の将棋のルールが確立されたのは14~15世紀頃と言われているので、江戸時代でも今と同じルールで将棋が指されていました。しかし名人は大橋本家・大橋分家・伊藤家の世襲制で、現在とは将棋界の制度に大きな違いがあります。いまとむかしで変わらぬ点と異なる点を比較しながら読むのも時代小説の楽しみでしょう。

この記事ではそんな将棋を題材にした時代小説について紹介いたします。

『宗歩の角行』谷津矢車

江戸末期に活躍した天才棋士、天野宗歩。五歳にして非凡な才能をもてはやされた幼少期。勝ち負けと理のなかで酒に溺れ、賭け将棋に明け暮れた上方時代。命を懸けたライバル大橋宗珉との苛烈な対局。名人を諦め、浮世にも御城将棋にも見切りをつけ、興行三昧する奥州行脚。実力十三段、のちに棋聖と呼ばれた孤高の勝負師は、何を追い求め彷徨っていたのか。近代将棋の定跡の基礎を築き、今も棋界から無二の存在と一目置かれる男の孤独と絶望に迫る、異色の伝記小説。
(光文社HPより引用)

宗歩の角行』は、谷津矢車による長編小説です。江戸末期に活躍した実在の天才棋士・天野宗歩の生涯を綴る伝記もので、各章にひとりずつ宗歩に関わった人々が語り手として登場するインタビュー形式の小説となっています。語り手の数は21人。宗歩に対する思いや考えはそれぞれ異なり、不世出の天才棋士でありながら素行の悪さも伝えられる宗歩の人柄や人生が多角的に浮かびあがってくる構成が非常にすばらしいです。

また、冒頭から宗歩がすでに死んでいることが明かされており、その死の謎に迫っていくミステリとしても読める作品です。実際宗歩の死に関して詳しい事実はわかっておらず、後世さまざまな憶測を呼んでいます。たとえば浮世絵師の東洲斎写楽なども謎多き人物で、その不詳の部分に想像力を広げて書かれたミステリが多数ありますが、本作も天野宗歩を材にとった歴史ミステリといってもよいでしょう。

作中に、宗歩の指した有名な手の局面図がたびたび挿入されているのもうれしいところ。時代小説に読み慣れていなくても、将棋に詳しくなくても楽しめる秀作です。

『桎梏の雪』仲村燈

文化六年(1809年)、江戸将棋界の重鎮・九世名人大橋宗英が惜しまれつつ世を去る。しかし、将棋三家、大橋家・伊藤家・大橋家の分家(宗与家)の間での名人後継ぎ選定は家元間の政争激しく、伊藤家の宗看が十世名人を襲名するまでには16年もの歳月を要してしまう。大橋分家七代目当主・宗与は、その間に生じた将棋家の衰退を憂いていた。自身は父宗英から棋才を継ぐことができなかったものの、鬼才・英俊を養子に迎え将棋家再興のため尽力する。養子ゆえの気後れを見せつつも、英俊は名人宗看に次ぐ実力者へと成長していった。妹で初段棋士の弦女も宗与家に活気を与える存在であった。まだ幼い宗与の嫡子・鐐英も、大橋家の弟子・留次郎(後の天野宗歩)と友情を分かち合いながら日々研鑽を積んでいく。しかし、それとは裏腹に本家と分家の間には確執が生じていた……。
(講談社HPより引用)

桎梏の雪』は、仲村燈による長編小説です。第15回小説現代新人奨励賞受賞作で、著者のデビュー作となります。江戸後期、九世名人大橋宗英が死没して以来、16年間名人が空位となり将棋所が衰退の危機にある時代を舞台に、大橋本家、大橋分家、伊藤家の将棋三家の人々のドラマを描いた本格将棋時代小説です。

物語の軸となるのは、将棋所の立て直しを図る三家それぞれの思惑が絡みあう政治と人間模様です。政治といっても、権謀術数の渦巻くドロドロした世界ではなく、おたがいにさまざまな思いがあるからこそままならない、繊細な人間ドラマが描かれているのが特徴です。三家の中心となる宗金(大橋本家)、宗与(大橋分家)、鬼宗(伊藤家)をはじめ、各家にかかわる若き棋士たちのキャラクターも魅力的で、群像劇として楽しませてくれます。

もちろん将棋の対局もしっかり描かれ、後半はミステリの要素も加わって、エンタテインメントとして申し分ない出来となっています。将棋三家の知識がとくになくても問題ないですが、Wikipediaで構わないので実在した人物たちについて少し頭に入れて読むと、より楽しみやすくなると思います。

『一万石の賭け 将棋士お香事件帖1』沖田正午

かの水戸の横門様の曾孫で隠居の梅白は供侍二人を従え江戸の町で“事件”を探していて、大道いかさま将棋を懲らしめる娘将棋指し「お香」と出会う。一方、とある藩と藩の賭け将棋に巻き込まれた骨董商の主は、お香の強さに店の窮地を救ってくれと頼む。梅白とお香が考えた、愚かな藩主らを諫める、必勝の一手とは? 書き下ろし長編時代小説。
(「BOOK」データベースより引用)

一万石の賭け 将棋士お香事件帖1』は、沖田正午による長編小説です。水戸光圀(水戸黄門)の曾孫である梅白が天才女性棋士・お香と出会い、とある大名同士の賭け将棋を発端とするトラブルの解決に乗りだすストーリーとなっています。

人物の配置は水戸黄門のパロディ(梅白が水戸光圀、その連れの竜之進と虎八郎が助さん格さんのポジション)で、時代小説としてのリアリティも最低限クリアする程度。文章もキャラクターもかなり軽いノリなので、時代小説をまったく読まない人でも気軽に読めることでしょう。ライトなつくりだからこそ、「一万石の領土を賭けた将棋」という無茶な舞台設定も無理なく楽しめます。

タイトルに「1」とあるとおりシリーズもので、3巻まで発売されています。

まとめ

以上、将棋を題材にした時代小説3作の紹介でした。気になった作品があればぜひ読んでみていただきたいです。現代を舞台にした将棋小説については以下の記事で10作紹介していますので、よろしければあわせてチェックしてみてください。

また、以下の記事では将棋を題材にした児童書について紹介しています。よろしければこちらもどうぞ。